ディナミカ・インプルシヴァ~管弦楽のための
曲名の“Dinamica Impulsiva”を日本語に直訳すれば「衝動的動力学」となりますが、実在しない架空の力学です。様々な衝動が音楽を推し進め、大きなうねりを生んでいく様を描き出すことを意図して題名としました。
この曲の原型は主に2013年から2015年にかけて、作曲者が五十代半ばのころに作曲されました。今回これに手を入れて完成版としたものです。
音楽は音そのもので自らを語るので、本来解説は無用ではありますが、以下聴いていただく「目安」として、曲の構成について述べておきます。
この曲はいくつかの主要な動機・主題と固定音型およびその展開から構成されていますが、古典的なソナタ形式などの構成によらず、やや複雑な様相を呈しています。
曲はティンパニ・ソロによる、C#とEの音からなる第一の動機の提示から始まります(Allegro ma non troppo)。これに、低音から順次弦楽器が絡んで次第に高揚し、第一バイオリンが導入されるとともに重要な固定音型(G♭DFDA♭)がハープとチェレスタにより提示されます(Meno mosso)。
そのあと全合奏による付点8分休符と16分音符の音型を特徴とする第二の動機によるパッセージを経て、第一の動機から派生した、弦楽器によるカノンが開始されます(Più mosso)。このカノンが高潮したところで、第一と第二の動機が展開され、次に弦楽器のピチカートとハープおよびチェレスタを中心とした三拍子のエピソードに入ります(Leggiero)。低音楽器による第二の動機の変形された旋律および16分音符に導かれる第三の動機が現れ、ここから金管楽器のコラールが導き出されます(Risoluto assai)。次に固定音型が回想された後、全合奏により第一の動機が再現して展開されます(Agitato)。
続いて、曲は緩やかになり(Lento)、イングリッシュ・ホルンとアルト・フルートによる緩徐主題の掛け合いを奏したのち、これを弦楽器が拡げていき、ソロ・ヴァイオリンとソロ・チェロが導入され、固定音型が再度回想されます。Lentoの緩徐主題を回想したのち、小太鼓の連打の上で、第一の動機を原型としたティンパニのソロが始まり高潮していき(Allegro ma non troppo)、第一の動機が全合奏により再現します。
固定音型が再び現れた後(Meno mosso)、固定音型を伴奏として、木管楽器と打楽器を中心にしたエピソードが挿入され、曲はコーダへと進みます。コーダ(Allegro ma non troppo)では、主要な動機、緩徐主題および固定音型を回想しながら進み、三連符を特徴とする新たな主題による全楽器の斉奏となり、第一の動機の二つ目の音、Eの全合奏をもって曲を閉じます。
本作品は2023年12月1日、水戸博之指揮、東京フィルハーモニー交響楽団によって、東京オペラシティコンサートホールにて、「オーケストラ・プロジェクト2023」において初演されました。
使用楽器 |
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piccolo |
Flute |
Alto Flute |
Oboe |
English Horn |
Clarinet in Bb |
Bass Clarinet |
Bassoon |
Contrabassoon |
Horn |
Trumpet in C |
Trombone |
Bass Trombone |
Tuba |
Timpani |
Percussion |
Harp |
Celesta |
Violin |
Viola |
Violoncello |
Double Bass |